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住まいに安らぎを

住まいに安らぎを

善玉菌 と 悪玉菌 / 親父臭 他

 ◇善玉を育てて悪玉を減らせ
 ◇「オヤジが臭い」わけ
 ◇恋愛は微生物の交換だとか…

 ヒトの体にはつねに100兆個以上の細菌がすみついており、常在菌という。
抗菌ばやりの昨今「菌」と聞いただけで敬遠されがちだが、美と健康を保つためいろいろ役に立っているらしいのだ。
その働きについて生物医学研究所(兵庫県淡路市)所長の青木皐(のぼる)さん(62)とともに考えた。【大森泰貴】

 ●保湿効果も
 「オヤジって何で臭いの」と女子高生2人が電車内でぼやく。
「ひょっとしてオレのことでは」と周りの男性陣が左右を見回す。
「臭いといえばオヤジ」は、今や世の定説なのか。
「中高年特有のにおいを『加齢臭』といいますが、40代を過ぎて体臭が強くなるのは男性に限りません」と青木さん。
 体臭には皮膚にすむ約1兆個の常在菌が深くかかわる。
汗や脂肪酸をせっせと食べて分解し、においのもとを作っているのだ。
中高年の体臭がキツいのは、老化とともに、餌となる脂肪酸の中にパルミトオレイン酸などが増えるからで、これらが分解されてできるノネナールという不飽和アルデヒドが加齢臭の原因になる。
 「じゃ、その常在菌ってヤツを殺せば」と考えると大間違い。
菌にもそれなりの存在理由がある。
代表格の表皮ブドウ球菌は皮脂や汗の成分を食べて酸を排出し、肌を弱酸性に保つ。アルカリ性を好む病原菌をブロックしてくれるのだ。
皮脂と相まって保湿効果もあり、しっとりツヤツヤの美肌は表皮ブドウ球菌のおかげともいえる。

 ●怖い有害菌
 毎日、薬用せっけんで体をゴシゴシ洗い、抗菌タオルや抗菌下着などの抗菌グッズで包囲攻撃すると、悪玉菌のみならず表皮ブドウ球菌まで殺してしまう。
乾燥肌が怖いだけでなく、菌の世界の勢力図が変わり、院内感染で悪名高い黄色ブドウ球菌やら水虫などの原因になる真菌が増殖しかねない。
「有害菌の方が打たれ強い。常在菌を虐待すると皮膚の生態系のバランスが崩れてしまう」と青木さんは説明する。

 ●ゴシゴシ洗いは禁物
 日差しが強くなる季節。
紫外線は肌だけでなく常在菌も痛めつける。
美肌を守るなら直射日光を避け、風呂も“カラスの行水”に。
入念に洗うのは顔、脇の下、乳首の周辺、へそ、股間(こかん)、足の指の間などで、あとは汗を流すだけでいい。
「ゴシゴシ洗って肌を傷つけ、皮脂の分泌が悪くなると常在菌に悪影響がある。要はバランスを健全に保つことです。
善玉菌、悪玉菌といいますが、相対的なもので、無害有益なはずの表皮ブドウ球菌も、高齢者など極端に抵抗力が落ちている場合は院内感染の原因になったりします」
 ところで、加齢臭は男女問わないというなら、なぜオヤジだけが矢面に立たされるのか。
青木さんは「男性側にも責任があるかもしれませんねえ」。
女性は化粧品や香水で体臭をフォローする。
ノネナール以外ににおいの原因になるアルコールやたばこの常習者も男性が多い。
男性が着る背広の繊維は分厚く目が込み、長く着るほどにおいを吸収する。
皮膚を清潔にし、下着やシャツ同様、スーツも毎日着替え、コロンでもつけて禁酒禁煙すればOKらしい。
「そこまでしてられないよ……」とのボヤきも聞こえそうだが。

 ●食物繊維とオリゴ糖
 腸には体内で最も多い60~100種類、ほとんどの常在菌がすんでいる。例えば大腸菌だ。
海水浴場の検査で数を調べたり、病原性のあるO157の影響でイメージが悪いが、大半は病原性がなく、肉類などを分解して消化を助けてくれる。
大腸菌がいなかったら、ステーキなぞ食べられないのだ。
 腸内の善玉菌の代表はビフィズス菌で
(1)ブドウ糖を分解して乳酸や酢酸を作り、腸内を酸性にして病原菌の増殖を抑える
(2)腐敗を抑える
(3)ビタミンB群、ビタミンKを作る
――などの長所がある。赤ちゃんの時に多く、年齢とともにどんどん減ってしまう。
「だから常在菌を育てる『育菌』という発想がとても大事です」と青木さん。
 ヨーグルトのビフィズス菌はそのまま腸に定着するわけではなく、乳酸を作って有害菌の繁殖を抑えるなど、腸内の仲間の援護射撃をしつつ結局排せつされる。だからこそ毎日補給する必要がある。
ビフィズス菌の大好物はオリゴ糖なので、食物繊維が豊富な野菜で腸内環境を整え、バナナなどオリゴ糖を含む食品を取ればいい。
ピロリ菌など有害菌の増殖を抑えるにもビフィズス菌に配慮したい。

 ●人の気配にも
 若い男女がデートして、手をつなげば皮膚の表皮ブドウ球菌やアクネ菌、キスをすれば口の中のミュータンス菌が交換される。
「それ以上の仲に進んだり一緒に住めば、体内の常在菌も共有されます。恋愛は微生物の交換なんです。
少し前までいた他人の気配を感じたりするのは、体から離れた皮膚のかけらや常在菌のにおいを無意識に感じるから」(青木さん)
 常在菌は自分の体にすむ「身内」であるだけでなく、社会生活を共に送る大切な仲間なのだ。



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